コンクリート診断士は、公益社団法人日本コンクリート工学会の認定資格です。

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コンクリート診断士会メンバーによるボランティア補修工事 2017年12月08日 土木学会誌|広島県コンクリート診断士会
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コンクリート診断士会メンバーによるボランティア補修工事 2017年12月08日 土木学会会誌

広島 平和記念公園 平和の灯 補修工事までの記録

平和モニュメントの長寿命化に向けて
 広島平和記念公園内に設置された「平和の灯」は、「核兵器が地上から姿を消す日まで火を燃やし続けよう」と祈念して1964年に建設された鉄筋コンクリート製のモニュメントである。建設後53年が経過し、過去に実施された補修個所を含め、全体的にひび割れや鉄筋露出が目立つようになっており、広島県コンクリート診断士会はこのモニュメントの長寿命化のためボランティアで健全度調査を行い、次いで補修工事まで行った。
 本報告は診断士会会員で実施した一連の長寿命化計画の経緯と実施状況を報告するものである。

計画に取り組むまでの経緯
 広島県コンクリート診断士会は、2011年7月の設立以来、診断士の技術向上、社会的評価と地位の向上に貢献し、社会の発展や安全に寄与することを目的として活動してきている。そして自主活動として広島市内のコンクリート施設を見て回り、変状原因を診断する「コンクリート探偵会」と呼ぶ企画をこれまで3回実施している。その活動の中で、市内のコンクリート製平和モニュメントの多くに劣化が発生しているにもかかわらず適切な対策がいまだ取られていない実態を確認した。そこで、その維持管理が今後重要となってくると診断し、会としてボランティアで維持管理に協力していく方針を立てた。そして、その手始めとして平和の灯を選定し、健全度調査を行い今後の長寿命化計画を管理者に提案しようということになった。コンクリート関係技術者として、世界中の人が来訪する平和記念公園での見苦しいコンクリートの状況を放置しておけないという思いもあった。
 そして管理する広島市へ趣旨の説明を行い、理解・協力を得て、診断士会員への参加を呼び掛けた。

健全度調査の実施と予想外の成果
 この呼びかけに17名の会員からの協力申し入れがあり、このメンバーでまず集まって具体的な調査計画を固めた。そして、調査の実施時期は、協力者が多く集まれるよう、業務に比較的余裕ができる年度明けすぐの2016年5月中旬の3日間とした。さらに、会員へは見学だけでも良いと呼びかけ、最終的には63名、延べで101名の参加となった。
 調査は表2に示す班分けを行い、各班長のもとグループ単位で結果のとりまとめまで実施することとした。診断士会員の所属は、役所、コンサルタント、計測会社、材料メーカー、生コン会社、建設会社と多岐にわたっており、調査は会員所属会社の応援もあり、各社の得意技術を持ち寄って実施することができた。その結果、通常では実施することが稀な特殊計測を含め、多彩な最新技術を結集することができた。そして、通常では一堂に会することのない異なる立場の多くの技術者による共同調査ということで、調査手法のテクニックの公開を含めた意見交換を通じ、診断士会設立目的の一つである技術力向上にも寄与できた。
 また、調査実施日がアメリカの現役大統領(当時)オバマ氏が来訪する直前ということもあり、多くのマスコミ機関に調査実施状況が報道され、コンクリート診断士の意義を一般市民の方々に知ってもらえる機会ともなった。

健全度調査結果と補修設計
 調査により、過去に実施された補修の原因は初期の干渉収縮によるひび割れによるものと判定し、現在みられるコンクリート劣化の主な原因は中性化による鉄筋腐食であると特定することができた。
 また、当初はないとされていた設計図面が調査直前に広島市を通じて(株)丹下都市計画設計から提供され、その構造の複雑さに驚かされた。それはモニュメントが当初想定していた版-壁構造ではなく、4本の梁柱と最小版厚6cmというRC版を組み合わせた複雑な構造であることがわかったからである。そして、過去の補修個所では材質不明の断面修復材が使用され、その箇所で再劣化が多く生じていることなどもわかり、当初の予想以上に補修設計が難しいことが判明した。
 補修方針は長寿命化という観点に加えて、コンクリートの打放し仕上げを好んだ設計者、丹下氏の意向も踏まえて、表面被覆工法などで外観を大きく変えることはしないということで会員の意見はまとまっていた。しかし、コンクリートの本来の姿とは何か、鉄筋腐食と剥落がすでに一部に認められる状況でどこまで手を加えた補修が良いのか、具体的な方針は決まっていなかった。
 そこで、改めて以下の三つの補修方針を立てた。〆8紊箸盞兮嚇生,鮃圓い覆ら段階的な補修を行う、▲灰鵐リート本来の外観(オリジナルの外観)を最大限維持する、今以上の劣化と外観の悪化(汚れ)を防止するため、評価が定まっていない最新技術も採用し、今後の推移を継続して会員誰もが見守れるようにする。
 この方針を実施するために、調査結果を受けすぐに補修工事に移るのではなく、前段階として補修試験を行うこととした。
 補修試験は2017年1月に3日間かけて再び会員からの材料、労務提供を受けて実施した。試験はまず平和の灯の外面を高圧水で洗浄し、次いで一部の面を区画に区切って工法を変えて補修を行い、状況観察を1ヶ月余り行った。
 その結果を受け、補修は部位を分けて次のように異なった工法を選定した。
 [化のあまり進んでいない外周面については、コンクリートを緻密化させ撥水性能をもつ表面含浸材と汚れ防止を図る親水材の組み合わせ塗布(シラン系表面含浸材と酸化チタンコートの組み合わせ)とする。
 鉄筋腐食と浮き剥離が目立つ床版下面は、斫り作業を最小限とした断面修復とし、効果収縮率の小さな断面修復剤(低硬化収縮性ポリマーセメントモルタル)を採用する。その上に、鉄筋防錆効果を持つ材料と表面緻密効果を持つ表面含浸材の組み合わせ塗布(亜硝酸リチウムとケイ酸塩系表面含浸材の組み合わせ)とする。
 また、この補修試験と補修設計実施の中で、当初は計画していなかった補修工事まで会員で実施しようという機運となった。

補修工事の実施と今後に向けて
 補修工事は会員と会員の所属する会社に加え、(一社)コンクリートメンテナンス協会(徳納剛会長)の参加も得て、2017年6〜7月にかけて実施することができた。そして、見苦しかったコンクリート面の補修跡や汚れは改善され、2017年8月の原爆死没者慰霊の平和記念式典を迎えることができた。
 なお、補修試験の一部箇所は、補修試験を実施したままの状態で、今後とも補修効果を観察できるよう残すこととした。
 広島県コンクリート診断士会では、今回の活動は「平和モニュメント長寿命化計画」として位置付けており、その手始めとして平和の灯を選定している。今回は比較的規模の小さな構造物であったので、補修工事までボランティアで実施することができた。しかし、広島にはこれより大きな平和祈念のモニュメントがあり、今後同様な活動を行っていくためには、今まで以上に会員の協力と会員所属会社の応援が必要となってくるものと思われる。それを乗り越えるためには、このような公共物の維持管理の重要性を社会一般の方にもより理解いただき、ボランティア活動の社会的評価を向上させていくことが大事と考える。
 最後に、今回の長寿命化計画に協力を頂いた多くの診断士会会員の諸兄、応援いただいた企業、法人の皆さん、広島市の職員の方々に謝意を表する。
(担当編集委員:山口剛士)




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