2019.6.20 中建日報 診断士が語る 戦争を経験した橋 9回目 橋を破壊する兵器 | プレス情報 | 広島県コンクリート診断士会

2019年6月20日 中建日報

診断士が語る 戦争を経験した橋 9回目 橋を破壊する兵器

2019年6月20日 中建日報 | 広島県コンクリート診断士会

弾丸の種類

 弾丸がどのくらいまで鉄やコンクリートを貫通できるのか、インターネットで検索してみました。すると知らなかった情報が多く出てきました。弾丸はその弾頭の形状で何種類にも分けられるそうです。鉛がむき出しのもの、鉛に真鍮などの金属をかぶせたものなどがあり、前者をソフトポイント弾(SP)、後者をフルメタルジャケット弾(被覆鋼弾:FMJ)と呼ぶそうです。ふたつの違いは、弾丸が人などにあたったときの威力の差となります。SP弾は、人体の場合貫通しながら鉛が変形してダメージを大きく与える一方、貫通力に劣ります。FMJ弾の場合は、変形しにくい金属で覆われているため貫通力が増し、人体へのダメージは少なくなります。そこで人道上の理由から、軍事用は国際協約(ハーグ陸戦条約)でFMJ弾にすることになっており、SP弾は狩猟用か犯罪人に向けて撃つ弾が貫通して2次被害を出さないよう、警察用などに限定されるのだそうです。
 そのため、先の橋で見かけた貫通跡は軍事用のFMJ弾によるものと推定されます。

弾丸はどこまで貫通するのか

 トランティエン橋で見た戦争の傷跡を見て、それまで戦後リサイクルで再建された本川橋や九十九橋で見た不規則な穴が戦争によるものであると確信しました。貫通力は通常の機銃による弾丸でもすさまじいことはわかっていたのですが、まだ上があり、戦車の厚い鉄板も貫通する徹甲弾というものが開発されていました。これにも種類があり、弾丸の硬度と質量を高めるものや、弾丸の衝突速度を速めるものなどがあるそうです。写真は、自衛隊も配備している後者のものです。

コンクリートをつらぬく弾丸

 徹甲弾は鋼材貫通する目的で開発されたものですが、数mもある要塞などコンクリートを貫通させる目的の砲弾もありました。第2次大戦前のドイツ軍で開発されたベトン弾と呼ばれる戦車から撃ちだされる砲弾がそれで、径80cm、重量7tもあり厚さ7mのコンクリートを貫通できたそうです。戦艦大和の主砲は46cmですから、その大きさには圧倒されます。この砲弾は特殊な鉄道軌道の上を走る「ドーラ」と呼ばれる80cm列車砲から発射されるものでした。しかしこの列車砲を運ぶためには、専用のレール4本からなる線路の建設とそれとは別に専用の砲弾を運ぶ貨物者用線路などが必要だったため機動力がなく、実戦使用はクリミア半島でのセヴァストポリ要塞の攻撃ぐらいだったようです。
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