「平和の灯」調査と補修 2017年11月6日 セメント新聞 | プレス情報 | 広島県コンクリート診断士会

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「平和の灯」調査と補修 2017年11月6日 セメント新聞

軍艦島見学会等で研さん

「平和の灯」調査と補修 2017年11月6日 セメント新聞 | プレス情報 | 広島県コンクリート診断士会 広島県コンクリート診断士会(会長・米倉亜州夫広島大学名誉教授)は2011年7月設立以来、広島市の「平和の灯(ともしび)」ボランティア調査や世界産業遺産の「軍艦島」(端島=長崎県長崎市)現地研修会など活発な活動を展開している。
 「平和の灯」の健全度調査や補修作業の発案について米倉会長は以下のように説明する。
 「平和モニュメントを汚れた劣化した状態にしておくことは、平和公園を訪れる多くの世界の観光客に『コンクリートは黒く汚れるものだ』というイメージを無意識のうちに抱かせることになる。このことは、ぜひとも払拭しなければならないという思いが会員皆から沸き上がり、まず平和の灯の調査・補修作業を会員のボランティアでしようということになった。原爆慰霊碑は最初1952年に鉄筋コンクリートで作られていたのに1985年に御影石にとり替えられている。そのため、昨年5月にオバマ大統領が慰霊碑に参拝された状況がテレビに映し出された時、慰霊碑は大変美しかったのに、その後ろにある平和の灯は黒く汚れているのが写し出された」
 昨年5月にまず「平和の灯」の健全度調査を行い、下面のひび割れや浮き、鉄筋露出など劣化進行が明らかとなり、今年1月には同会の徳納武使事務局長(福徳技研社長)が会長を務めるコンクリートメンテナンス協会と共同で高圧洗浄と各種表面補修材による補修試験を行い、6~7月には再度表面の高圧洗浄を行った後で、補修工事を行っている。いずれもボランティアでの取り組みで、試験や施工当日は地元のテレビ局や一般紙も取材に訪れ、大きく報道。米倉会長は「当面の活動を一般の方々にも知ってもらう良い機会となり、コンクリート診断士の認知度・社会的評価が少しでも高まれば」と述べている。適切な補修補強によって、今後100年間でもきれいで、健全なコンクリート構造物を実現できるということを多くの人々に認識してもらう良い機会になったと話していた。
 広島県診断士会は①コンクリートの調査・診断・補修技術に関する情報の収集と会員への提供―技術の体系立てた入手・蓄積を行い、これを会員に提供②会員間の親睦、技術交流による技術の研さん―研修会、意見交流会を通じ、技術研さんと後進の指導・援助③コンクリートの調査・診断・補修業務の支援―公正・中立の立場からコンクリート施設管理者を支援④緊急時のコンクリート調査・診断・補修の公共支援―コンクリート構造物の緊急を要する事態には、調査診断チームを組織するなど、公共に寄与する支援活動に取り組んでいる。10月末現在の会員数は正会員89人、賛助会員27社で、米倉会長、徳納事務局長のほか、復建調査設計の鈴木智郎氏が副会長を務めている。また十河茂幸近未来コンクリート研究会代表が顧問、半井健一郎広島大学大学院准教授がオブザーバーとして同会の活動をバックアップしている。
 「平和の灯」は1964年8月1日に平和の灯建設委員会によって建立。意匠設計は丹下健三氏、構造設計は坪井善勝氏が担当した、高さ4×幅13×奥行8メートルの鉄筋コンクリート(RC)製モニュメント。
 昨年5月の調査はドローンを用いた空中からの写真撮影や地上からの3次元測量と精密写真撮影による「寸法・外観計測調査」をはじめ「外観目視調査」、非破壊試験も適用した「コンクリート・鉄筋調査」、「塗装・塗膜・美観調査」を実施した。
 表面はコケやカビで黒く汚れており、米倉会長は「施工時の湿潤養生が不十分で、表層部分がポーラス状を呈していたためカビやコケ類が生育しやすい環境となっていたようだ」と指摘する。下面には過去に補修した部分があり、局所的にはかぶり不足もあって中性化による鉄筋腐食も見られた。調査の概要は米倉会長、鈴木副会長の連名で日本コンクリート工学会(JCI)発行の『コンクリート工学』今年4月号に寄稿している。また、土木学会誌今年12月号に「地域レポート」として鈴木副会長名で補修工事まで含めて掲載される予定である。
 調査結果を受けて今年1月にコンクリート表面高圧洗浄・補修材塗布試験、6月19日・20日・7月3日・4日にはボランティアによる本格的な補修工事を行った。高圧洗浄によって表面のコケやカビはかなり落とすことができ、高圧洗浄後に浮き、剥離・鉄筋露出個所を防せい処理・断面修復補修し、そのあとに表面含浸材を塗布した。以前、補修した部分は周辺とは色が明らかに異なるため、セメントと同色の絵を描いて目立たないようにしている。
 一方軍艦島での研修会は今年4月に実施。徳納事務局長は以前から調査に携わっており、そのつてで一般の観光客は入ることが許されない場所の視察も行なった。
 毎年開催しているものとしては定例サロン、現場研修会など。定例サロンは2カ月に1回行なっており、11月8日には「ひび割れ注入剤の使い分けについて」をテーマに開催予定。エポキシ系と無機系(セメント系)注入剤それぞれの特性を両メーカーの担当者が説明し、質疑応答などを通じて使い分けを理解することがねらい。現場研修会は昨年コンクリート工場やコンクリート製品工場を視察している。広島県内のコンクリート構造物の劣化状況などを観察し、実際の現場に行くことができなかった会員を含めて原因などを議論することも行っている。
 また米倉会長は日本コンクリート診断士会をはじめ、各地区診断視界との交流も積極的に進めている。

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