2026年10月8日 コンクリート新聞
2026年10月8日 予防保全で点検に着目 JCI医療分野を参考に
予防保全で点検に着目
JCI医療分野を参考に
日本コンクリート工学会(JCI)は9月15日、都内で「予防保全を目的とした鉄筋コンクリート構造物の点検方法に関する研究委員会」(竹田宣典委員長)の報告会を開いた。同委員会の前身ともいえる「既設コンクリート構造物の予防保全を目的とした調査・診断・補修に関する研究委員会」で、関係者にアンケート調査を行ったところ、1000件以上の回答が得られ、予防保全に必要なものとして、予算や指針・マニュアルなどがなく、評価方法も存在しないという結果が得られていた。今回はテーマを「点検」に絞って検討した。
開会あいさつで竹田委員長は、5年に一度のインフラ点検が義務化され、3巡目に入ったものの、現在も目視や打音検査が中心であり、予防保全ではなく、事後保全が主流であると指摘。委員会の傘下に中性化、塩害、鉄筋腐食の3WGを設置して検討を進めたことを報告した。
パネルディスカッションに先立って、竹田委員長が「構造物の予防保全のための点検の実態と課題」をテーマに設定した理由について、「(定期健診など)予防医療は定着していても、構造物の予防保全は浸透していない。」と言及。予防医療では、生活習慣の改善や予防接種といった一次からCT(コンピューター断層診断)やMRIを利用した精密診断の三次まで体系化されている。構造物の予防保全では、一次が住民の協力や参加、二次が定期的な検査や点検、モニタリング、三次が実際の補修措置などに符号するとした。医療分野を参考に「今後、予防保全が定着していくことを期待する」とした。
パネラーは蔵重勲氏(電力中央研究所)、遠藤裕丈氏(土木研究所・寒地土木研究所)、土屋直子氏(国土技術政策総合研究所)、萩原直樹氏(中日本高速道路)、野村倫一氏(西日本旅客鉄道)、田沼毅彦氏(元都市再生機構(UR))の6人が務めた。
始めにパネラーが話題提供を行った。蔵重氏は、土木学会コンクリート標準示方書の維持管理編の改訂に携わった経験をもとに、コンクリート構造物の性能確保に向けた流れについて説明した。遠藤氏は土木分野において、国や自治体のインフラ点検の支援を行ってきた経験を踏まえ、人手、技術力、予算の3つが不足していることにと言及した。土屋氏は建築分野においては、建築基準法第8条で建物の所有者に常時適法な状態で維持することが努力義務となっていること、民間が主体となるため、マンションでは新築時から長期修繕計画が策定されていることなどを紹介した。
萩原氏は高速道路で行っている点検を措置(補修)までつなげる手順を説明した。野村氏は鉄道の構造物には150年以上の歴史があるものが多く、予防保全の考え方が1970年代からあったと解説。田沼氏は、約70万戸を保有しているURではその半数が1955〜75年に建設された住宅であり、点検作業もマニュアル化ができていることなどを紹介した。
意見交換では、予防保全措置を行ったことで良かったことや苦労したこと、構造物の長寿命化への有効性、新たな点検手法の期待(要望)や課題、予防保全の普及に向けた将来像を議論した。予防保全の課題として、「構造物のライフサイクルコストの平準化には貢献するものの、(管理者である国や自治体から)イニシャルコストの理解が得られにくい」(遠藤氏)、「民間が点検に要するコストをどこまで負担するか。その費用対効果を数値で示せていない」(土屋氏)、「点検・診断から補修を行った後の有効性の確認」(萩原氏)、「(鉄道の運行が止められず)大規模修繕が行いにくい」(野村氏)、「点検と修繕の人員確保など優先順位付けが難しい」(田沼氏)などがあげられた。